自虐のススメ

齢五十を過ぎたあたりから、自虐嗜好が身近になってきた。
「何をしてもイマイチな自分」との思いから、Twitterのアカウントは@imaima1である。

アニメキャラを大きく描いた自家用車を「イタ車」という。
僕自身は真似ようとは思わないが、それを自ら「イタ車」と呼ぶ姿勢には共感を感じてしまう。

自虐の時代がやって来た

特に最近、「自虐嗜好」は世間でも注目されるようになって来たと感じている。
毎年某保険会社が募集している「サラリーマン川柳」も、注目度が増して来ているように思う。
広告表現の世界では「自虐マーケティング」という言葉も使われ初めている。

自虐と言えば、ちょっと情けない、ネガティブなイメージがある。
しかし最近は、それだけではないと思えるようになってきた。

自虐は黒人ブルースに通じる?

「サラリーマン川柳」を読むと、自分自身や自分を取り巻く環境を嘆きつつも、それをあえて表現し笑いにしてしまう、したたかさを感じる。

嘆きを面白おかしく表現しても状況が好転するわけではなく、根本的な解決にはならない。
しかしそれを内に向けるのではなく、外に表現してしまうことにより、すこし光が見えてくるような気がするし、そう思いたい。

黒人ブルースは奴隷制度や人種差別という厳しい現実の中でも、したたかに生き抜く糧として生まれたという。
黒人ブルース程ではないが、自虐指向にもそれに近いものを感じるのは僕だけだろうか。

自虐はマゾヒズムとは違う

人には多かれ少なかれ「依存と支配」の快感を求めるところがあるという。
ドイツ生まれの心理学者エーリヒ・フロムはその著書「自由からの逃走」で、ナチスを支えたドイツの中産階級に、強い「権威主義的傾向」を指摘した。
その結果、人々は国家や指導者にはマゾヒズム的に対処し、ユダヤ人に対してはサディズム的に対処した。

僕はもの心がついた頃より、権威主義に対する嫌悪感を強く感じていた。
権威を振りかざす人を見ると、虫唾が走る。

その為か、「依存」にも「支配」にも興味が薄い。
あまり自慢出来る事ではないが、ほとんどの男性が持っている出世欲などの「パワーゲーム」への関心も薄い。

自虐嗜好には、「依存したい」とか「支配したい」とかという傾向は感じられない。

自虐嗜好にあるのは、自分を嘆きつつも前向きに生きようとする、したたかな思いである。

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