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自然の脅威と恵み

東日本が巨大地震に見舞われて、一月以上が経過した。
大切な方が亡くなられたり、未だ行方不明である方々には、謹んでお見舞いを申し上げます。

自然の脅威に、人智がいかに及ばないかを痛感した一月であった。

僕が週末に通いつめている滋賀県の安曇川は、花折断層に沿って流れている。
この断層も過去幾たびか大地震を引き起こしており、1662年には町居村と榎木村(現在の梅の木)を飲み込む、大崩落を引き起こしている。
災害史上に残る「町居崩れ」である。
現在、梅の木の対岸で採石が行われているが、ここの土砂はもともと道路側の山が、頂上付近から崩れ落ちて来たものである。(従って、発破をかける必要がない)
坊村から町居にかけて緩やかな流れを見せる安曇川が、ある地点からは一転巨石が点在する荒々しい姿へと変貌する。この地点には町居崩れの際に自然のダムが造られ、それが決壊して荒々しい渓相が形作られた。直前の緩やかな流れは、自然のダムの堆積物によるものである。

町居崩れで出来た自然のダム跡に立つ。(Photosynthによるパノラマ写真)

左側が緩やかな上流で、右側が荒々しい下流。

僕が足繁く通い出してからも、長期に通行止めとなるような崩落が、2度起っている。これらは地震によるものではなかったが、この地域は度重なる地震で地盤が崩れやすくなっているのである。

このような事もあり、断層に関して色々と調べた事がある。
恐ろしい災害をもたらす断層であるが、長い目で見ると、意外にも人間の営みに大きなメリットをもたらしている

Google earthで断層地帯を見ると良く解るが、花折断層のような大きな断層は、直線の溝を形成する。

画面中央を、花折断層が縦走している。

この溝を利用すると、遠くまで効率的に移動する事が出来る。
従って、重要な街道は断層沿いに出来る事が多い。
言うまでもなく、鯖街道は花折断層に寄り添って走っている。
この街道が、街道すじに豊かな物資と文化をもたらした。
昔は湖西よりも、この街道すじの方がはるかに栄えていたそうである。
現在は過疎が進んでいるが、交通量が多い事には変わりない。

このように自然の脅威となる断層も、人間には大きなメリットをもたらしている。

日本は地震の多い国である。
これは複数のプレートが複雑に入り組んでいる事に起因していると、容易に想像出来る。この地造が複雑な地形を創り出し、豊かな自然と、その恵みをもたらしているのではないだろうか。

そもそも日本列島を創り出したのも、この地殻構造ではないだろうか。

脅威となる自然が、一方では穏やかに恵みをもたらしてくれている。
この地に暮らす我々は、この事をしっかり受け止める事が大切だと思う。

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