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瀬戸際のイワナたち

ここ数年、安曇川でイワナを釣っていない。

以前は本流域で綺麗なイワナがよく釣れた。

イワナはアマゴやヤマメと違って、愛嬌のある魚である。

警戒心は強いが、好奇心も旺盛であり、一度イワナとにらめっこをした事がある位である。

そんなイワナに逢って見たくなり、谷をつめてみた。

フライフッシングは枝沢やブッシュの釣りは苦手だと思われがちであるが、そんな事はない。

フライロッドは餌釣りの竿より、うんと短い。

その短いフライロッドの先から、ティベットを50cm程出して提灯釣りをするのである。

これは日本固有の技術ではなく、ダッピングと名が付く立派な技である。

元々短いフライロッドで、提灯釣りをする気になれば、フライフィッシングの守備範囲は、随分と広がる。

さて、谷をつめて釣りになりそうなエリアに辿り着いた。

巨大な砂防ダムに挟まれた、100m程のエリアである。

そこにイワナは居た。

一般的に堰堤に挟まれたエリアにいるイワナは、近親交配の為、奇形や模様の乱れが多いと言われている。しかし、ここのイワナたちは、型こそ小ぶりだがみんな綺麗なやつだった。

人間の都合で変貌した過酷な環境の中、けなげに命を繋いできたイワナ。

そっとリリースすると、元気に流れに帰っていった。

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