WalkmanとiPod、どっちが革新的?

僕は骨の髄からAppleエコシステムの住人で、依存度は高い。
Mac2台+iOS端末4台を使っており、サードパーティ製を含むアプリケーション達を同期させ、何処でも同じ環境で効率よく活動出来るようにしている。
正にAppleに囲い込まれている、幸せな羊である。

AppleのiPodやiPhone、iTunesストアのような革新的な商品やサービスは、日本では生まれないとよく言われる。
しかし携帯音楽プレーヤーに限れば、iPodの登場よりもWalkman登場の方が、はるかに革新的な出来事だったと僕は思っている。

iPodとWalkmanは、携帯音楽プレーヤーとしてよく比較されるが、そもそも携帯音楽プレーヤーというジャンルを開拓したのはWalkmanである。
この事は、日本人にもAppleに劣らない革新的な製品を作り出す潜在力がある事を示していると思う。

携帯音楽プレーヤーとしてではなく「音楽鑑賞の手段」と言う、より広い視点でWalkman登場を見てみると、その革新性が際立ってくる。
ここではWalkman登場が、「音楽鑑賞の手段」にどのような変化をもたらしたのかを見てみたいと思います。

レコード登場以前の音楽鑑賞

気の遠くなる程昔から、人類は音楽を愛してきた。
しかしレコード登場以前、音楽の鑑賞は、
他人の演奏や歌を、演者の前で聴く
しか無かった。
他人の演奏を鑑賞するには当然演者の近くに行き、演者に演奏してもらわなければならない。
本格的な演奏会は、決まった所に決まった時間に行かなければ鑑賞出来ない。

自動ピアノやオルゴールという鑑賞手段があったが、「より身近に音楽を聴きたい」とい切なる願望から生み出されたものだと推察される。

レコードの登場
円筒型レコード

円筒型レコード
レコードはエジソンが発明したが、彼は会話などを記録する事務機として捕らえており、音楽の鑑賞という「娯楽」に使われるのを嫌った。
また、彼が発明したレコードは円筒形であり、大量に複製するのには難があった。
音楽の鑑賞手段としては、ベルリナーが発明した円盤型レコードが普及していく。
円筒型と違い、スタンプのような原盤から容易に複製出来る事が普及した理由である。

円盤型レコード

円盤型レコード

レコードの登場により、音楽鑑賞はそれ以前より革命的に身近になった。
またレコードは、同じものを繰り返して聴くという、今までは理論的に不可能であった事を可能にした。
レコード盤と再生機(当時は蓄音機)さえあれば、誰でも同じ音楽を居ながらにして、幾度も鑑賞出来るようになった。
音楽の悠久の歴史の中で、レコードはまさに音楽体験に革命をもたらしたのだ。
さらにレコードは、レコード音楽という新たな芸術表現を獲得して行く事になるが、今回のテーマから離れるのでここでは割愛します。

Walkmanの登場

初代Walkman
レコードは音楽を居ながらにして、身近に鑑賞出来るようにした。
1979年7月のWalkman登場は「身近さ」をさらに極限にまで拡張した。

再生機を持ち歩ける程小型化した事の意味は、計り知れない。
いつでも、どこでも音楽鑑賞が可能となったのだ。
再生機がモバイル化したという事は、音楽鑑賞が極限まで日常化された事を意味する。
携帯電話の登場が人間のコミュニケーションに大きな影響を与えたのと同じようなインパクトが、音楽の分野で起こったと言える。

携帯電話が普及した時、周りに目もくれずそればかりに熱中している人達に、批判の目が向けられた。
Walkmanが普及した時も同じように、所構わずヘッドフォンで耳を塞いだままの人達に、批判の目が向けられた。
革新的な製品の登場には常に批判が付き物である。

iPodの登場

初代iPod
携帯音楽プレーヤーとしてのiPodの革新性は、所有者の音楽ライブラリ全てを持ち歩ける程容量の大きな記憶媒体を搭載した点である。

2001年10月の登場以来Walkmanの市場を浸食していき、早くも翌2002年8月にはシュアが逆転した。
以降2010年8月まで、トップを他に明け渡す事は無かった。
Walkmanにトップを明け渡したとはいえ、iPodの機能は、遅れて登場したiPhoneに含まれている点を加味すると、音楽携帯音楽プレーヤーの市場でのAppleの地位はゆるがないと考えて差し支えないと思う。

携帯音楽プレーヤー市場でのApple躍進の源は、iTunesStoreを含めた囲い込みの妙にあるが、Walkmanの革新性を超えるような事ではないと、僕は思っています。
そもそもこの市場は、Walkmanが音楽鑑賞を極限まで日常化した事により生まれた市場であると思うからである。
Walkmanの登場がなけれは、iPodが登場したかどうかさえ、怪しいとさえ思ってます。

また初代iPhoneは、当時のiPod touchと機能的にもデザイン的にも酷似しており、電話が出来るiPod touchとも言えます。
つまり、Walkman登場がなけれは、もしかしたらiPhoneも生まれて来なかったかも知れないと、僕は思っている。
スティーブ・ジョブズがWalkmanに一目置いていた事は、有名な話である。

こうのように考えると、Walkmanの革新性は音楽プレイヤーの枠を超えたものと言えるのはないだろうか。

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