プロデューサーとしての加藤和彦
|加藤和彦が命を絶ってから、約1月が経った。
追悼番組も組まれ、色々と再評価されているが、
僕が加藤和彦を最も評価するのは、レコーディング・プロデューサーとしてである。
プロデューサーを称する音楽家は多いが、その殆どが自分の楽曲を他人に歌わせるというスタイルである。
加藤和彦はシンガー・ソングライターをプロデュース出来る、数少ないプロデューサーの一人である。
吉田拓郎をはじめ、泉谷しげる・岡林信康・大貫妙子等、彼のプロデュースによって優れたレコードを残したシンガー・ソングライターは多い。
彼の場合、アレンジのみならず、音作りを含めレコード制作に深く関わるといスタイルで、シンガーソングライター達の魅力を見事に引き出している。
自身の作品でも企画レベルから音作りに至るまで、全てをコントロールする能力を発揮していた。
「パパ・ヘミングウェイ」「うたかたのオペラ」「ベル・エキセントリック」「あの頃、マリー・ローランサン」等の傑作が、彼のレコーディング・プロデューサーとしての卓越した能力を示している。
特に「パパ・ヘミングウェイ」における繊細な音作りは、特筆に値する。楽器に関してもシンセサイザーやボコーダーから、スチール・ドラムまで、実に効果的に配している。
ハード・ソフト両面の進歩により、今日では一人でバンドサウンドが作れてしまう時代である。中田ヤスタカに至っては、曲作り・演奏・アレンジはもとより、マスタリングまで自分でこなしてしまう。
しかし、アナログ時代に企画から、作曲・アレンジ・ミキシングまでこなし、かつ、それがさまになっていたミュージシャンは少ない。
今は活動を停止している、大瀧詠一ぐらいではないだろうか。
加藤和彦はこの点において、もっと評価されるべきだと思う。
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